「まがい物のデータサイエンティストは滅びゆく」という2015年末の記事にかかれたAI界隈の予測が意外にあたっている件
会社で調べ物をしていたら、偶然見つけたこの記事。
文脈からこの先のAI・機械学習界隈の予測らしきものをいくつか挙げている論説を紹介する記事ですが、何を今さらな内容なのかと思ったら、よく見れば2015年末に書かれた記事でした。
まがい物のデータサイエンティストは滅びゆく:USのトップ5データサイエンティストたちが語る2016年の展望 - 渋谷駅前で働くデータサイエンティストのブログ
これが6年半以上経った今見ると、案外当たっている部分が多いので、思わずうなってしまいました。
ということで、いくつか紹介。
(以下、太字部分は上の記事から引用したものです)
5. まがい物のデータサイエンティストは滅びゆく
記事のタイトルにもある通りです。曰く、底の浅いデータサイエンティストはいずれ淘汰される、というもの。
言われてみれば、2017年ごろには多くのAI系ベンチャーがありましたけど、今はかなり減りましたね。というのも、TensorFlowやKeras、Pytorchという機械学習フレームワークの普及のおかげで、多くの人が自力でAIを構築できる時代になり、結果、さほど特色のないところは淘汰されてしまった、という感触です。
6. 他分野から移ってくるデータサイエンティストが増える
確かに、これは言えてます。かくいう私もその一人ですし。
データサイエンスだけができる、というのは、英語が喋れるだけのビジネスマンと言った感じで、それ自身は何の役にも立たないです。工学、金融、財務、実験などの専門に加えて、データサイエンス能力を兼ね備えた人が何か成果を出せる時代。私の周りもそんな雰囲気です。
7. 在宅勤務するデータサイエンティストが増える
個人的に、一番衝撃を受けたタイトルはこれ。まるでコロナ禍の時代を予測していたかのようです。
といっても、この内容自体は感染症によって在宅勤務が増えるなどとは書かれておらず、データサイエンティストが希少であるから、その人材がその場所による制約を受けていては確保できないという問題に直面するため、いずれ場所に寄らない在宅勤務という業態がスタンダードになる、という感じの論調です。
もっとも、そうはいっても変われないのが日本という国。ですが、結果的にこのコロナ禍ではそんな業態が日の目を見るきっかけとなりました。
14. 環境問題にもっとデータサイエンスが適用されるようになる
これはどちらかというと、世の中の流れが環境問題にクローズアップされつつあるため、そこにAI技術が投入されるようになってきた、というのが実感ですね。
環境問題だけでなく、構造解析分野や物理学などにも機械学習の応用が見られるようになってます。
とまあ、よく当たってるなぁと感じた部分は以上ですが。
あまり当たってないなと感じるところもちらほら。
1. データサイエンスや統計学によるモデリングはもっとブラックボックス化して自動化される
ブラックボックス化はともかく、あまり自動化はされていない気がします。
確かにDataRobotというノンプログラミング系のアプリケーションが登場し、自動化が進んではいるものの、あまり普及している感じはないですね。ただでさえブラックボックスが、ますますブラックボックスになってしまうため、分析作業における人の直接の介入というものはむしろ増えつつある気がします。
11. 政府によるデータとデータサイエンスの利活用が進み、不正やテロの抑制に用いられる
悲しいかな、これは外れも外れ、大外れですね。これは皆さん、頷き過ぎて首が疲労破断してしまうほど振ってしまうんじゃないでしょうか。
特にこの日本においては、正に元首相がテロに倒れるという事件が起きたばかりですし。そうでなくても、行政機関がそもそもデジタル化が進んでいるとは到底思えないですし。
と、勝手にいろいろとコメントを書きましたが、6年前にこれほどのことを推測していたというのは驚きです。
AIに対する過剰な期待は薄れ、ようやく応用の道筋が確立し始めてきたかなというのがこの界隈の大方の感触じゃないでしょうかね。
そういえば、2045年辺りにAIが人を超えた存在になる、いわゆる「シンギュラリティ」が起こるという論調がありますが、私自身はその予測は外れると思ってます。
刺身にたんぽぽの飾りつけをするようなうんざりとする作業を肩代わりしてくれるというAIは発展するでしょうが、特に人のクリエイティブな部分を丸投げできるようなAIというのは、私が生きている間には実用化しない気がします。この第3次AIブームは、人の”創造”という部分の謎をかえってクローズアップさせてくれた、という気がします。
例えば「綺麗な花」というものがあって、綺麗な花の画像を大量に集めてそれを「綺麗」だと言わせるAIを作ることは容易ですが、どうしてそれが「綺麗」だと言えるのか、その理由をAI自体が理解しているわけではないので、新たな美を生み出す、見出すことはできない、ということです。
この「理由」というやつがモデル化されない限り、シンギュラリティなんて夢のまた夢だと思ってます。
なんて、サイエンティストどころかエンジニアクラスの私が偉そうに語るのもおこがましいですね。この辺で止めておきます。
この先、6年後にはどうなってるんでしょうね?
少なくとも、疫病と災害と戦争が収まった世の中で、単純作業を肩代わりするAIが人の働き方を支援してくれている世の中になっていて欲しいものです。あ、勝手に戦争をやってくれるAIなんてものは、なしということで。
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