放射線被曝量が視覚的にわかる”放射線量チャート”
放射性物質の拡散が心配される昨今の情勢ですが、よく耳にする”シーベルト”を視覚的にわかりやすくした資料が出ています。
GIZMODO Japan:チャートで放射線量を比較してみましょう
拡大表示してもらうとよくわかりますが、マイクロSv・ミリSv・Sv・10 Svの順に大きさを変えて表示しています。
単位を視覚的にするとここまでわかりやすくなるとは・・・これを見るとチェルノブイリの事故で石棺を作った作業員がいかに大量の放射線を浴びていたかがよくわかります。
ちょっと余談ですが、ネット通販や2ちゃんねるやTwitterを見ていて気になることが2点。
一つは”被曝”という漢字をよく”被爆”と書いている人がいます。
放射線を浴びることと爆発現象とは無関係ですので、当然”被爆”は大間違いです。正しくは日の方の”被曝”です。
もう一つ、最近”○○マイクロシーベルトまで測定可能なガイガーカウンター”なるものが売られてますが・・・
例えばこんなの。
ガイガーカウンターは飛んできた放射線の”数”を数えるものです。
つまり、よく野鳥を数えるときに使うカウンターに似ています。
そういう意味では放射線が多いか少ないかは測定できます。
が、原理的に放射線のエネルギーを測定できないため、吸収線量(Sv)を測定することはできません。
(一応参考までに、Wikiにも載ってます:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%82%AC%E3%83%BC%EF%BC%9D%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC%E8%A8%88%E6%95%B0%E7%AE%A1)
野鳥を数えるカウンターで森の野生動物の数は数えられますが、その動物の重さはカウンターでは測れません。当たり前のことです。
しかし、もし数えた動物が全部馬だったら、馬の平均的な体重さえわかればその重さを推測することはできます。
これと似ていて、線量が出せるガイガーカウンターというのは、コバルト60やセシウム137などエネルギーのわかりきった放射性物質の場合に使える簡易的なものです。飛んでくる相手がわかってる場合にのみ有効ということです。
なので、今回のようにヨウ素131だのセシウム137だのがどれくらい入り混じったかわからない物質の被曝量をガイガーカウンターで測ることは不可能です。
野鳥カウンターに例えるなら、カウンターのみで象にネズミや羊がごっちゃごちゃになっている森の動物の重さを推測しろ、というくらい無茶です。ちゃんとした専用の測定器が必要です。
にもかかわらず、なぜかネット上で突如こういうガイガーカウンターが売れ始めていますね。
もちろん放射線測定器には違いないので、ある程度やばいかやばくないかはわかります。ただし通常でも自然放射線が飛んでくるので、当たり前ですが平時でもカウントは出てきます。
私が持っている浜松ホトニクス製小型GM計数管では、平時の場合は1分間に1~3回なります。とあるウラン鉱脈のそばに行ったときはラドン濃度が高くて1分間に30回以上なりました。
つまり平時の状態を知って初めて、30回/分もなったらちょっとやばいかな?とわかるわけです。
ところで身の回りの放射性物質として、蛍光灯に使われる”グロー管”と、キャンプで使うガスランタンのマントルがあるといわれてます。
グロー管は蛍光灯の点灯を早くするためにβ線源であるアメリシウムを微量に含んでいるとされています。
ランタンのマントルは、炎を明るくするためにトリウムが微量に使われているといわれてます。
が、実際にいくつか買ってみたり、ネットでググって調べましたが、いまどきのグロー管やマントルはどうやら放射性物質を含んでるものはほとんどないようです。
なので、ガイガーカウンターを自作(ガイガーカウンターを自作する記事参照)しても、なかなか確認用の放射線源が身の回りにはなさそうです。
取り留めもなく長々と書きましたが、いずれにせよ放射性物質から身を守るためには、正しい知識・情報と冷静な判断のみが身を守ります。
不安なあまり、変な商品やデマ(ヨード剤の代わりにうがい薬を飲め、など)に惑わされず、冷静にふるまうことをお勧めいたします。
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コメント
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輸入できるかどうかは分かりませんが
米アマゾンでガイガーカウンター実験用の
ウランを売ってるらしいですよ?
ガジェットマニアとしては☢マークの入った
アイテムは是非とも手に入れたいですね?
投稿: もみじ | 2011年4月 7日 (木) 20時26分
こんにちは、もみじさん。
おお!いいですね、ウラン!って喜ぶのはさすがに不謹慎すぎですね・・・
日本ではウラン、プルトニウムは"核燃料取扱主任者"でないと扱えない事になってるので、どうでしょう?ちなみに私は放射線取扱主任者の試験だけ合格してます(あとは講習を1週間受ければ免許取得)が、どのみちこの資格では核燃料を扱えません・・・残念(?)。
投稿: arkouji | 2011年4月 7日 (木) 22時18分
高校の普通科の知識しかないので
放射能ってのが、よく解って無いのですが…。
核分裂によって中性子や電子などが放射線として
周りに飛び出して来る度合いが"放射能"という風に思っていますが良いんでしょうか?
まあ、それはさておき
①水(軽水)は放射性物質にならないのでしょうか?
水素原子や酸素原子にそれぞれ同位体が在ると思うんですが
(このへんはWikiで『重水』を検索しました。)
福島原発事故のTV解説時によく登場した
「α線は紙一枚で止まります。β線は…γ線は…X線は…中性子線は…」なんて絵が出てましたが、
コンクリートや水なら放射線を"吸収する"というように説明されてたと思います。
例えば、核分裂による中性子が水分子のそれぞれの原子に留まるなら
どういう形で止まるんだろうと…考えはじめたら気になりまして。
γ線やX線なら電磁波ですから水があればエネルギーは、水分子に"吸収されてしまう"のは良く解ります。
だけど中性子は…よく知らないものですから。
今回の事故で解らないことがもう一つ
②「浄水器で放射能は除去できない」というもの
そもそも放射性物質なら濾過することも不可能ではないように
思えるのですが、水そのものが放射性物質になるのなら
こりゃどうしようもなくなるはず(だから①の疑問が湧くのです)
ところが原子力発電所では、
放射性物質を含む水を減らそうとする場合、
水を"蒸発"させるという説明が、事故発生当初に放送されてました。
(放射性物質が低レベル濃度の水なのかもしれませんが)
蒸発で水分子と放射性物質を選別できるんなら
「限外ろ過膜」「イオン交換樹脂膜」「逆浸透膜」などでも
分離できるのではないでしょうか?
(既に復水器あたりで使ってあるのかもしれませんが…。)
少なくとも「低レベル放射性物質に汚染された水の垂れ流し」
よりましだと思うのですが?
ただしゼオライトや活性炭で"吸着"というのは
いかにも胡散臭い気がしてなりません。
投稿: enutea | 2011年4月12日 (火) 00時14分
こんにちは、enteaさん。
水やコンクリートで止められる放射線は"中性子線"です。γ線は鉛がよくつかわれます。
もちろん、水でα線(ヘリウムの原子核)、β線(電子)、γ線(電磁波)も止まりますが、荷電粒子ではない中性子線は水分子が有効です。それも大量の。
原理を簡易的な説明するときには、よくピンポン球に例えられます。ピンポン球をボーリング玉のように大きなものに当てると勢いよく弾かれますが、ピンポン球同士だと空いては弾き飛びますが、飛んできたピンポン球も速度が落ちます。
つまり中性子は電荷がないため、同じくらいの質量(水素原子)を持ったものにぶち当てて減速させ吸収するしかないようです。正しいのか微妙ですが、そう聞いたことがあります。
ホウ酸も中性子吸収能力が高い物質だそうです。
放射性物質とはいえ、化学物質なのでフィルターで取り除くことは可能じゃないかと。ただしフィルターに放射性物質が濃縮されていくのをどうするかという問題がありそうですが・・・どうなんでしょう?
投稿: arkouji | 2011年4月12日 (火) 06時36分
なるほど、ピンポン玉とボーリングの球の話で何となくイメージが湧きました。
それから濾過によって出てくる放射性物質の濃縮液…
ホント危ないものですよねぇ、
実際は"人工腎臓"みたいな
円筒形の容器に中空糸がぎっしり束ねられたフィルターユニットを
沢山使って除去するしかないでしょうけど
こんなプラントを今から造ってても間に合わないでしょう…。
現状では原発の"放水口"に"シルトフェンス"(濁水流出防止に河川などで使う物)を浮かべてありますが、あれは河川でも泥の濁りが抜けていくくらいなので実際には"気休め"だろうと思います。
しかし、何らかの方法で"放射性物質を取り除いた水"を放流(出来れば再利用)しなければ、
いよいよ原発の周辺地域へ放射性物質が拡散し続けると
思いますので、
何とかしてもらいたいなぁと
ニュースに注目しているところです。
投稿: enutea | 2011年4月12日 (火) 12時57分
こんにちは、enteaさん。
放射線は見えないし、感じることができないので、余計に不安になります。どれくらいなら安全かというガイドラインもない(あってもかなり安全マージンをとった値)ため、少量の放射性物質でも危ないとされてしまいます。
ただ、これを機会に多くの人に知っていただきたいのは、医療放射線の量の大きさです。日本は先進国の中でもずば抜けて医療放射線被曝の量が多い国とされています。
胸部レントゲンを撮るとき、生殖器保護のため腰に鉛入りの腰あてを巻かないといけないのですが、それをやってる医者をあまりみたことがありません。一度聞いたのですが、なんでそんなことするの?という反応でした。
医者は無条件で放射線取扱主任者になれる国なので、放射線に関して無頓着です。国によっては、レントゲン写真の年間撮影回数を制限してるところもあるのに、日本では平気で一度に二枚くらい撮ることもあります。
交通事故で気を失ってる間にCTスキャンやらレントゲンやらをたくさん撮られて、あとで計算したらすごい被曝量だったという人もいます(放射線の専門家の人です)。
下手すると、福島第一原発周辺30kmの地点よりはるかに多い放射線を浴びてることだってあります。
今の状況を危険というなら、医療現場も同じくらいやばいことも知っていただけたらなあと思います。
投稿: arkouji | 2011年4月12日 (火) 23時28分